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4月4日だから。人間仮免中 つづき

 

 人間仮免中という漫画がある。ブルースにどっぷり浸かった友人が突然貸してくれたものだ。

作者は卯月妙子。幼少期からの統合失調症により入退院を繰り返しながらも、漫画、舞台、エッセイ等クリエイティブな世界で活躍されている方である。元はAV女優でかなりどぎついマニアックな内容のAV(スカトロとか)に出演し、カルト的な人気を得たという。

 

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人間仮免中は作者の統合失調症の日々をつづったドキュメント漫画である。

統合失調症により入退院と投薬の日々を送る妙子は25歳年上の恋人、ボビーに出逢う。笑いあり喧嘩ありの騒がしくも楽しい毎日を送っていたある日、彼女は薬の服用を怠り、衝動的に歩道橋から真っ逆さまに飛び降りる。

人間仮免中は歩道橋から飛び降りるシーンから話は始まる。

まず目に入るのはぐちゃぐちゃな線で描かれ、対照的に恐ろしいほどまっすぐな姿勢で道路に落ちる妙子。

「こ、これ大丈夫なのか、漫画として成立しているのか?」というレベルで線がぐちゃぐちゃ。表紙は普通の絵柄だがこれは作者の過去の絵を参考に再構成されたものだろう。それぐらい絵がすさまじいことになってしまっている。

ただ、これにはきちんとした、そしてとても重い理由がある。読み進めていくと理由がわかる。この点に関してはぜひとも本編を読んでほしいのでここでは説明しない。

 

 

本題に入ろう。本だけに。

駅の売店でまさかの人間仮免中つづき」を発見した。

 

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即買いしてページを開く。絵は、線は、以前よりも劇的に回復していた。

話を読む前に絵の回復を知ることができただけでもう安心できた。それだけで十分だと思える本だった。それほど前作の内容が衝撃的すぎたのだ。

相変わらずボビーと騒がしく日々を過ごす妙子。統合失調症陰性症状がひどく、年上のボビー(もう70近い)に介護してもらいながら、喧嘩し、泣き笑い、激しく毎日が過ぎていく。

症状はかなり激しく、幻聴、幻覚、興奮等々、枚挙にいとまがない。ボビーに当たったり、逆に当たられたり。

漫画上でボビーはガハハ系の頑固で愉快なおっさんとして描写されているのついつい忘れてしまうが、ボビーの歳は70歳である。とあるページにリアル調ボビーの絵が描かれてあるが、それでも70とは信じがたいエネルギーにあふれた顔をしている。

そして作者の卯月氏だ。どんなに自分の世界がめちゃくちゃになろうと、生きることをあきらめなかった。ぼろぼろの自分をさらけ出し、それをユーモアに乗せてガリガリと描きだした。間間に挿入される俳句、短歌もキリキリとした愛おしさに溢れる、生身の声だ。

こんなにバイタリティにあふれた人間はなかなかいないだろう。しかも二人も。

 

とあるシーン。二人は喧嘩の果てに「だから生きろ死ぬまで」という結論にたどり着く。

生きる。何があっても生きる。生きているということは当たり前かもしれないが、その当たり前がぐらぐらと揺さぶられる毎日を送っていると、ふと、前後不覚に陥ることがある。そんなとき、この「だから生きろ死ぬまで」が痛々しく突き刺さるのだ。自分の世界がバグまみれでも、誰かと一緒に生きるということは素晴らしいんだよ、と、下手すればただの綺麗事のようで拒絶したくなるようなメッセージが、卯月氏の手にかかればストンと腑に落ちる。壮絶な体験をした卯月氏にしか描くことのできない漫画なのだ。

 

そうそう、仮免中つづきには東日本大震災の時の卯月氏のエッセイ漫画も載っている。こちらも傑作。最後の卯月氏が信じた事実は、紛れもなく事実なのだと思う。

 

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本編において元夫との息子が就職、結婚し、幸せなイベントが続いたある日、息子の一声で二人はある決断をする。あっけらかんと描かれたシーンだが、ここに至るまでの道のりを思い出すと、本当によかったと思えるシーンだ。ぜひとも2冊まとめて読んでほしい。

 

 

そして、4月4日だから。

妙子さん、ボビーさん、結婚記念日おめでとうございます。末永くお幸せにお過ごしください。