ホメヲボックスの傾向と対策

ホメヲボックスのKKOが管理中。

考察も感想も野暮である 「蛭子能収初期漫画傑作選 パチンコ」

数か月前の事。幸運なことに、蛭子能収さんの本をプレゼントしてもらった。

蛭子能収初期漫画傑作選 パチンコ」だ。

 

 

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

パチンコ 蛭子能収初期漫画傑作選 [ 蛭子 能収 ]
価格:1404円(税込、送料無料) (2017/9/5時点)


 

パチンコ。インタビューも載ってるよ。

私が頂いた本には帯がついているのだが、

これがちゃんと描いていた頃の蛭子漫画です! by担当マネージャー 

 という身も蓋もない帯コメントがついていた。

テレビでふわんふわんと活躍されている姿からガロ系ヘタウマ漫画界の重鎮といったオーラは全くないから仕方ない。

最近の子供は蛭子さんの本業が漫画家であるということを知らんのだろうなと思ってしまい、意味のない上世代から目線を持ったことを自覚。暫し赤面する。

 

はい、本題。本だけに。感想を書こうにも、この短編集、

感想が非常に書きづらい。

短編としてストーリーが成立して完結している作品と、がーっと来てヴァーと展開してシャーっと畳む勢い任せの話等々が、ごったミックスになっているからだ。

理解しがたいものに対して、必死で考察する人間の矮小さをあざ笑うかのように、意味も意図も超えた遠いところにある作品だ。ただそこに存在するだけでこんなに人を悩ませる、あるいはスルーしてしまいたくなる作品はなかなか無い。

これを読んで必死に解釈しようとする私をどこか遠くて近い場所から蛭子さんが「へへっ」と笑っているような気さえしている。

やっと最近考察や解釈の野暮さに気が付いたので筆を取った。

よってこの記事では、「読んだとき思ったこと」を書き連ねていこうと思う。

 

思ったことを書く都合上、ネタバレはするが、この作品にとってはほとんど意味がない。気になったら実際に漫画読んでね。

 

 

  • パチンコ

表題作であり投稿2作目でありデビュー作。パチンコに行きたくてもいけない話。

特に悪いことが起こる話ではないが登場人物のじっとりした目線が苦しくなってくる。蛭子漫画の汗は不快指数の高さがよく伝わるから好き。

アックス112号でも、雀荘に放火されて麻雀したいけどできない話が載っていた。蛭子さんはギャンブルしたいけどできないシチュエーション好きなんですかね。ご本人が実際にそのシチュエーションになったら悲しみそうなんですけど。

 

  • うなぎの日

毒うなぎで盛大な置いてけぼりを食らうが、皿の中の悪魔の予言は当たっていたことになる。作品内できちんと完結はしているのだ。釣り上げた皿と似た形に描かれたUFOがおしゃれ。

 

 

  • 犯され上手…

題名から期待した通りに事は運ばない。残念でした。パンツを履け。給食費泥棒を懲らしめて「やっぱり悪は滅びて終わり」というみみっちさが哀愁を誘う。この話ではUFOの主張が大きくなっている。

 

 

  • 金持ちのタンゴ

変わり者の金持ち夫婦が庶民をからかう。この本の中でも比較的わかりやすい話だった。途中までノリノリだった奔放な金持ちが豹変し、夢の時間は終了。悔しがりながらも、特に後遺症も負わず元の道に戻る庶民。欺き欺かれるというのはこういう風に後腐れがない(少なくとも人生の先々で引きずるようなものではない)のが一番。

 

  • 地獄を見た男

「見たくないよー!!」と言いつつ結局見てますねぇ……。金持ちのタンゴと同じく、ひどい目には合うけれども元の日常に戻れるタイプの話。この経験、役に立つのか?立たないな。

 

 

  • 出会い、そして別れ…

野鳥男とペンギン女は恋をして互いを追いかける。この話、出会っているが別れてはいないと思う。追いかけ続けるという関係が、出会えない故にに別れってこと?追いかけっこを続ける男女が楽しそうだから良し。

 

 

なんでボットン便所が競艇場につながってんねん。

 

  • ハエと人間

ヒステリックなおばさんに絡まれる緊張を描いたんかと思ったらそうではない。この作品、蛭子さんは読者を一発ドッキリで驚かせたかっただけなのでは……。ドッキリ系フラッシュを思い出した。

 

楽しげ やくざ達。ぶっ殺しても死なないエリート。理解の埒外にあるものには太刀打ちできない。

 

続きまして、またやくざ話。かろうじてシュール系ギャグに踏みとどまっている作品。

 

一番理解に困った。ホラーなんだろうね。理不尽話なんだろうね。この話だけやたら線が太いのはなんででしょうね。面相筆で描いたのか?

 

  • 日本女装化計画

日本を女にっ、しってしまえー!

2ページしかないけど、十分です。エルビスから比べると一転して平和な話。ただ笑える話。安心。

 

  • 田舎の女子高生

田舎の女子高生には都会の女子高生には無いものがあるらしい。純朴さとかそういうものでしょう(適当)。この話の田舎の女子高生は舞台装置で、メインは男子高校生だと思う。あと数学の先生も舞台装置。

 

シュール系の話ならこれが作品集の中で飛び抜けている。語り口を変えればショートショートになりそうだ。

 

  • 汝よインテリに泣け!

4人のインテリが旅をしながらインテリ失格になったりならなかったりする。インテリ失格になると首吊りになったり、インテリ達とおしゃべりがしたい女が出てくるが特になにもなく終わったり、意味深すぎる。背景の木の葉や崖が何かの比喩なのかと思うが、それこそ考察するのが野暮になってくる。

「ちぇ、結局面白くもない奴が残ったって訳か」とインテリ街道を進みながら思うシーンがあるが、蛭子さんのインテリに対するイメージって「面白くもない奴」なのかな。

 

  • 人生の分かれ道 人生の分かれ道(女編)

一番おすすめしたい話。これは2作品同時に思ったことを書いていく。というのもこの2作、全く同じシチュエーションで男女とその内容だけ変化をつけて描かれた作品だからだ。絵の構図も飛んでいるUFOも、説明の書かれた矢印も、もすべて同じ。

どちらも幼馴染が同じ道を歩き、途中で人生の分かれ道に立ち、それぞれの道をあたりさわりなく歩んでいく。

で、幼馴染とはいえ、差があり、これが人生の道の歩み方に変化をもたらす要素となる。男の場合では金持ちかそうでないか、女の場合は美人かブスか。肩を並べて歩いているようで恵まれていたほうが一歩先を行くという表現は、ごまかしが無くて好き。

ほげほげと語らいながら歩んでいくが、お互いの気持ちに齟齬が生まれ、暫し無言になる。そして別れ道にたどり着き、笑っているうちは平和が続くから、笑って別の道を行くのだ。

全く同じシチュエーションと書いたが、これら2作品は最終コマに大きな違いがある。

男版は、幼馴染二人とも、量に差はあるが、蛭子作品独特の汗をかきながら笑って進んでいく。

女版はブスのほうだけが汗をかきながら進んでいく。美人は汗をかかない。二人とも笑ってはいるが、汗をかいているのはブスのみ。しかもその汗も、どこか涙のように見える。明らかに男女で汗のかき方が違うのだ。

女の格差とそのカーストのほうが残酷であるということなのだろうか。

 

  • 私は一人‥‥

何時描かれたのか知らないが、最近の蛭子絵に近い。この作品では表題作とは反対に登場人物はパチンコに行ける。めでたしめでたし。

 

 

 

 

はい、以上で収録全作品です。

この記事を読んで興味を持ってもらえるんだろうか……多分無理。私の力量不足。

人生の分かれ道シリーズだけでもちゃんと読んでほしいと思う。

インタビューも収録されていますが、ふんわりした感じで癒されます。

 

結論、やっぱり蛭子作品に解釈って野暮だわ。

そのまま目を抜けていく様に読むのが一番なんだね。