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その好きはLoveですか、Likeですか。「夜明け告げるルーのうた」

今年一番良かった作品というお題があったので、書きます。

今年、ダントツ良かった作品は、夜明け告げるルーのうた

私は湯浅政明氏が大好きなので、製作が発表されてからワクワクしながら待っておりました。

ねむようこさんのキャラクターデザインも非常にキュートで素敵でにっこにこです。

そして初夏に、会社に間違って出勤した日に観に行った映画であります。

結果、非常に良かった!

多様な画法と演出が詰まり過ぎて湯浅ワールド爆裂で、ストーリー面では大切なことがたくさん詰まった素敵な物語です。そして、徹底的に見た人へのエールとなる作品だと思います。

 

では感想と考察をガーと書いていきます。今回も見ていない人を放置の不親切設計です(訳:ネタバレに配慮しません)。

また、この映画には重要な要素たくさん散りばめられているため、あんまり映画の時系列に沿って書けません。申し訳ありません。

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身バレから始まる物語

主人公カイはYoutubeらしきサイトに自作の音楽をUPしているが、いきなり同級生のバンドメン、遊歩と国夫に身バレしてしまい、コメント欄に思いっきり身バレコメントを書かれてしまう。もうちょっとメディアリテラシーを持て君ら。

カイは舞台となる町、日無町には引っ越してきており、友達らしい友達もいなかった。当然、音楽が趣味であることを誰も知らない。

ここで身バレしなかったら、カイの世界は閉じたままだったのだ。Youtubeというワールドワイドにおいて、開かれているようだったカイの世界はこの時点で全く開いていなかった。曲に対する絶賛コメントもたくさん書かれていたのに、カイはまーったく楽しそうではない。評価される=楽しいでは必ずしもないかもしれないが、曲が完成した喜びとか、UPした時の高揚感とか、そういったものがもったいないことにカイには全く感じられないのだ。

だが、同級生二人にカイの世界は無理やり開かれてしまったのである。否応なしに人とかかわることが始まってしまうのだ。空気を読まないという最強のカードによって。

そして始まるオープニングソング。湯浅氏独特のまるっとしたデザインの物体が踊り狂うハッピーなオープニングだ。 

しょっぱなから身バレはやっぱりニヤついてしまう。こういう笑いどころを出して、ドーンとオープニングにつないで、「ああ、湯浅さんの世界に入れるんだ!」という喜びを味合わせてくれる。演出の妙だと思う。

 

 

人生の柔軟性

人生の柔軟性というのがこの作品の重要なポイントであると思う。

失敗しても戻ってこれる。失敗しても違う道がある。人から見れば失敗かもしれないが自分は決して失敗だと思わない。

それでいいんだ。それで大丈夫なんだ。次にどうするかなんだ。

こういった展開がエピソードの大小や形を変えてこの映画にはたくさん出てくる。

離婚して地元に戻ったカイの父。ダンサーを目指していたが養殖で成功したフグタさん。うかつなツイートで大騒動を起こしてしまった遊歩。人魚ランドの失敗を経ても挑戦をやめないファンキーな遊歩祖父、町おこしを考えて今を精一杯生きる先輩、などなど。

もちろんカイも失敗している。主にコミュニケーションの失敗。

国夫と住職に人魚の資料をもらった時のカイと、ルーが人魚ランドでショーをした時のカイは明らかに違う。前者は開いており、後者は閉じていた。

それでも最後はカイは開くことをえらんだ。失敗しても立ち上がったのだ。カイの父がみそ汁の貝を見て「おっ、開いた」と言うシーンがラスト付近にあるが、あれは確実にダブルミーニングだ。

遊歩の失敗とリカバリーもすごい。だって、先輩や国夫の後押しがあったとはいえ、あの大騒ぎの中、「私が悪かった、ごめんなさい」と町内放送を使って全町民に言う度胸!

きっかけのツイートが幼稚であったがために人魚たちに迫った危機を、逃げずに受け止め、謝った。私が甘いかもしれないが、「すげぇ……」と思った。そしてそれに答えるようにYUIの曲を流す国男。そりゃ遊歩も抱き着きますわ。その時の国男の動きがまさに湯浅って感じでいいんですよね。ケモノヅメのギャグパートそのものだった。

 ちょこちょこ出てくるサル顔がいいんですよね!口が3の字になってるやつ。

 ちょっと脱線した。

遊歩、いいキャラしてますよね。ラストの遊歩の「町、明るくなったね!」みたいな発言は「おいおいあの騒動直後でカイになんつうぐう畜発言を!」と映画館で思ってしまいましたが(笑) 

これははっきり言うタイプだから!の遊歩だから言える〆のお言葉。カイの晴れ晴れした表情が物語っております。町全体が明るくなった。3人にも、町の人にも明るい今日がある。それでいいんだ。

 

映像の楽しみ

脱線ついでに映像について語ろう。もう一度言いますが、

ちょこちょこ出てくるサル顔がいいんですよね!口が3の字になってるやつ。

ケモノヅメが大好きなのであのギャグシーンがもうたまらんのよ。

ダンスシーンが象徴的ですがうねうねしながらもビシッビシッと動くんですよ。

フラッシュを多用してルーの瞳や髪や水が表現されていると聞き驚きました。

フラッシュアニメというとどうしても秘密結社鷹の爪を連想してしまうので(大好きですよ。劇場版5作目が好きです)。

今回の映画に特徴的だったのは四角く区切られたゼリー状の海水。上に乗ったりぽよんぽよん跳ねたり。

蛇足ですがバスロマンジャスミンの香りを使用するとそれっぽい色の風呂に入れます。さあみんなでルーになりきれ!ルーパパでもいいぞ!

この水の表現が湯浅氏ならではで、クライマックスではこれでもかと大活躍します。痛快です。柔軟性のある水というのは、スライムとも違う伸びがあるんですよね。

こればっかりはストーリーと違って口で説明できないので観てください。

 

 

人魚達はどこへ行ったのか。

まだ自分の中で正解が出ていないのですが、人魚たちは最後どこにいったのかということだ。

御蔭岩と人魚が不可分な存在であるので、消えたというのが普通の解釈でしょうが、なんだかそれも味気ないなぁと思う。

さすがに全員日光に焼かれて消えたという感じではないでしょう。存在できなくなったというのが自然でしょうか。うーん味気ないと思ってしまう。

ルーとルーパパは日陰や傘さえあればかなり自由に行動できていたので消えたと見せかけて実は日無町沖合の深いところにいたりして。そうでなければ御蔭岩のような大岩のある所に移住したりして。人魚の人生にもこれくらいの柔軟性が欲しいな。やっぱり人生の柔軟性というのがこの作品の重要なポイントであると思うのです。

ルーがカイの目の前から忽然と消えてしまったのが、人魚=悲恋であるという象徴による必然性だったらつらいなぁ。これはたこ婆やある意味カイ祖父にも当てはまるけど。たこ婆彼氏もなんでルーみたいに姿を見せなかったんだ……海の暮らしが楽しすぎたのか。竜宮城みたいに時間の流れが変わってしまうのか。祖父の方は人魚が楽器を返しに来たような回想があったので、もう人魚個人の性格によるというしかない???

実は監督の想定した答えを知るのが怖くて、ブルーレイのオーディオコメンタリーをこのあたり聞いていないんです。いつかちゃんと聞かねば。

 

 

 

その好きはLoveですか、Likeですか。

最後に真面目な話。最も書きたかった部分です。

 

この映画のキャッチコピーは「君の"好き"は僕を変える」。

ルーは様々な局面で「スキ!」を連呼する。

カイは最後にルーに「好きだ!」と告白する。

この好きはLoveなのか、それともLikeなのか。

人生の柔軟性と同じく、この映画のテーマになっているのが「好き」である。

遊歩、国男、他の登場人物にもいろんな「好き」が出てくるが、カイとルーの言う「好き」に絞って考えたい。

エイプリルフールにルー大柴さんにサイトがジャックされた時キャッチコピーは「ユーの"ラブ"はミーを変える」になっていた。ライクじゃない!ラブだ!はい結論出た!

 

ルー大柴が「夜明け告げるルーのうた」公式サイトをジャック?サイト内がルー語に : ニュース - アニメハック

 

……嘘です。ちゃんと考えます。

ルーに関してはLikeで問題ないと思われる。

ルーは興味あるものに対してかなり頻繁に「スキ!」という。

子供だから、というのもあるが、興味のあるもの、気に入ったものに対する素直なド直球感想が「スキ!」なのだろう。これは決してLikeだから軽いというのではなく、ルーなりの愛の表現なのだ。駆け引きの一切ない 無垢な愛の表現だと思う。となるとLoveもちょっとは含まれているのかな?恋愛感情ではないことは確かなんだけど、愛の表現。これがルーの「好き」だと思う。

では、カイがルーに対して抱いた「好きだ!」はなんだろうか。

これは、すごく難しい。ルーに対する彼の接し方はガールフレンドのようであり物珍しい友達のようでもある。海中で人工呼吸のためにキスされたときは明らかにスケベ顔をしていた。ルーが人魚ランドでみんなと友達になりたいと言ったときは彼女に対する嫉妬というよりも友達が自分の意図しないほうへ行っていしまういらだちのように見える。ここまでだと難しいけど、Loveだと思う。カイは中学生なので恋愛の好きがいまいちわかっていないのだろう。多分自分でもなんでこんな気持ちになっているのか、ルーに必死になるのか本当はわかっていないはずだ。

そしてやっぱり最後の「歌うたいのバラッド」を歌ってからのカイのルーへの「好き」はLoveに寄っているように見える。歌うたいのバラッドは「愛している」というフレーズを持つド直球ラブソング なのだが、作品を通して何度も出てくる。しかし、原曲に近い感じではっきり歌われるのは、クライマックスのルーを元気づけるシーン。カイはルーへの気持ちを歌うたいのバラッドに乗せている。

そして海が静まり、ルーに告白するのだ。「好きだ!」と。

ここでカイは恋を知ったのだ。映画ではっきりとカイが何かに対する好意を口にしたのはこのシーンが初めてである。

この好きは確実にLoveだ。そしてルーは消えた。カイが大人になって、誰かを好きになって結婚しても、この思い出は中学生の淡い恋の明かりになって遠いところから彼を照らすのだろう。

 

カイが明るく今を生きられるようになったのは、ルーのおかげなのだ。

 

 

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