究極の脱力おじさんの記録「漫画で読む絶望名人カフカの人生論」
こんばんは。KKOです。
今日の漫画は「漫画で読む絶望名人カフカの人生論」平松昭子 絵 頭木弘樹 監修
です。
変身を書いたカフカの弱り切った人生を漫画にしたものです。
一言で言うと、「ネガティブすぎる」!
- 横柄な父親が嫌いすぎていろいろメンタルに支障をきたす。
- パンのための(要するに稼ぐための)仕事が嫌い。時短勤務もキツイ。
- 虚弱なのに妙に健康に気を遣うあまり無茶をする。
- 筆まめだけどデートはしたくない、結婚からも逃げたがる。婚約解消しすぎ。
- 自分に自信が無く、人付き合いも孤独も嫌。
- 病気(しかも結核)になるとそれを理由に色々なことから休める逃げられるから喜ぶ。
ざっと読んだだけでこれだけのダメが詰まっています。結核になって喜ぶ人間ってなんやねんというかんじですが、上記のダメを並べるとそれもあり得るな、と納得できてしまうのがすごい。
この作品は鉛筆とコラージュでダイナミックに描かれており、肉食系カフカの家族や父親の横柄さはガンガン伝わり、超草食系のカフカのダメ、ネガティブ、へろへろはしなしなしおしおと伝わってくる。ヘタウマ系に分類されると思いますが、非常に卓越した表現です。カフカは結構とんがり耳に描かれているんですがよくフィットしています。
この話は感情移入するとすごく疲れてカフカに引っ張られてダメにはまってしまうので、ちょっと離れた位置から笑ってみるのがちょうどいいのだと思います。
脱力しきった草食おじさん(でも文豪)の記録としてみるとだめな部分も妙にほほえましく見えます。
カフカの友人たちや恋人たちもあきれつつもこういうところに惹かれたのかもしれません。
作中様々な名言が出てきますが、やはり一番心に残ったのはこれです。
将来に向かって歩くことは僕にはできません
将来に向かって躓くこと、これならうまくできます
一番うまくできるのは倒れたままでいることです。
この内容を恋人のフェリーツェへの手紙で書いちゃうんだからすごい。
こんなに正直に書けないよ普通。そういうところはとてもうらやましいと思った。
自分の思ったことを素直にはきだしすぎるからネガティブ垂れ流しの名言集になったんだな……と。
なんにせよ、正直なのは良いことです。
人生に疲れたら、あるいは疲れていなくてもへろへろおじさんを見る感覚で読んでほしい一冊です。